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非特異的腰痛は画像検査で分かるのではないですか?

2020/07/18

過日、当ホームページの「施術案内」項目内で、「特異的腰痛と非特異的腰痛」について記述しましたが、今回からは、その内容について記述してみたいと思います。

今回は、「非特異的腰痛は画像検査で分かるのではないですか?」という問についてです。結論は、「画像検査で症状の全てを説明することはできません」ということです。

非特異的腰痛の原因は、X線やMRI(磁気共鳴画像装置)などの画像検査で分かるのではないか? と思う人も多いと思います。しかし、残念ながら現状ではすべてを捉えることはできないのです。確かにMRIを中心とした画像技術の進歩によって、背中や腰の骨、椎間板の細部にわたるまで、詳細に見ることができるようになりました。しかしながら、画像検査から得られる異常を腰痛の症状として関連付けて、正確に「この異常が腰痛の原因ですよ」と言い切ることは残念ながらできません。例えば、急性の非特異的腰痛であり、「災害性腰痛」としても多い「ぎっくり腰」では、椎間板や椎間関節など、腰に関連する組織のどこかが傷付いたパターンが多いことは間違いありません。そのため、診断名としては「腰椎捻挫」「腰部捻挫」などの名前を付けられることが多いのですが、実際に画像検査をしても障害された部位がはっきりわからないのです。実は腰痛がない人でも、X線やMRIの画像で骨にずれがあったり、骨が減ったり、ヘルニアが見つかったりということはよくあることで、こうした異常は加齢とともに増えてくる変化であり、一定の年齢を越えれば多くの人に見つかる所見です。例えば、白髪やしわのようなものです。

一方、こうした所見があっても腰痛に悩まされることなく、元気に過ごしている人はたくさんいます。もちろん医学的に「病気」とは扱われません。一方で腰痛があるのに画像ではこうした異常が全く認められない場合もあります。つまり、画像検査は骨や椎間板の変化を捉えることはできるものの、現状では、起こっている症状の理由をそれによってすべて説明できるわけではないのです。このことは、世界的にもコンセンサスが得られている事業です。有名なものとして2009年、欧米の研究者が行った腰痛に対する画像検査と治療結果に関わる調査のメタ解析(過去の複数の研究結果を統合して解析するものです)で、「Lancet」という権威のある医学ジャーナルに掲載された論文があります。その内容は、「重篤な基礎疾患のない非特異的腰痛患者に画像検査を行っても、治療結果は良くならない」というもので、画像検査の所見と腰痛との関連が強い印象を患者さんに与えがちな医療スタイルに警鐘を鳴らすものでした。近年、世界的にも画像検査の意義が改めて見直されているのが現状です。

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